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2012.03.29
ふとい指を
なめて
それを
アイラブユーの代わりにする

のみこめない薄い空気が
くるしくて
くるしくて
デパートの惣菜も
銀行の光も
万年筆の繊細な書き味も
わからない
わからなくなった

どこへでもゆける
たったひとりのあなたは
眠れない子どものようだ
覚えたての気もちを
疑いもせず眼差しにこめている
いとしいひと
いとしいひと

捨ててきた約束と
身を焦がした永遠の恋の
ひとつひとつ
そのすべてを
弔って
許してもらう
少女のわたしに許してもらう

別れるまでの道
手をつないで人混みをくぐる
ねえ今
おなじ部屋に帰って
おなじ暮らしを紡いでる気がする
そんなつまらないことをゆめみて
ひとりで電車に乗ったよ
今日も
そして考える
十九回目の春がくるまで
ふやしつづけた傷はすべて
あなたに見せるためのもの
だったのかなって
そんなことを

にがい薬と甘い毒の区別がもうできない
花のように鞄のように
いつのまにか抱きしめていた

いとしいひとは目の前
大人にはまだなれないから
ふとい指を
なめて
それを
アイラブユーの代わりにする

(十九歳)
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2012.03.16
みえない線で影をえがいた
名前のないきみでもようやく言葉を覚えて
ちいさいノート積み上げて口ずさむ

渡りきれた橋のこと
ただ大きすぎる画用紙の上で遊んでいた
ふいに嗅いだ世界のにおいが
新しくて
冷たくて

ああ
あなたに会いたい会いたい
いつものように冷たい指
宝石をあげるから

きみは遠くの景色をすべて絵にして
その頭に詰め込んで私にあたらしい言葉を教えた
おもちゃみたいにロボットみたいに
正しくできないけど言葉を教えた

ああ
あなたの横顔を眺めて
どこまでも同じ風景の中と錯覚したい
ああ
あなたに会いたい会いたい
線の上に指をすべらせて届きたい

きみは私に言葉を教えた
やりきれない気持ちの波をひとつにまとめあげて
それでもなおナイフのように身体を突き刺して
しまうような
言葉
言葉

ああ
あなたに会いたい会いたい
どうしようもなくあふれる熱をみてほしい
ねえ
あなたが好きで好きで

(言葉と私)
2012.03.16
最低の僕には
聞こえないきみの歌
つまらない熱を
朝を
迎えてこぼれゆくものを思う

繋がる気もなくさしだした手
すがるように
祈るように
きみはいとしそうに窓の空をみていた

とどかないもの
出会えない人
溶けない雪
あたらしい扉の前で立ち尽くす

最低の僕と
つまらないきみの
手一杯の失敗を塗りつぶして
かなしみなんて額縁の中に
放り投げて
はしりたい

(焦燥の時代から)
2012.03.09
湯気の立ちそうな/
あなたの/
血色のいい/
頬に触れた。

声とも吐息ともつかないふうに
「あ」
漏らしたあなたはわたしをみて、
泣きそうな顔になった。

そこそこに使い古した安価な国産車は、
とぽとぽと頼りなげにガードレールの横につけると
礼儀の正しい子どもみたいに丁寧に停止した。
「だめ」
言葉に意味はのらなくても間がもたないので
しかたなく発音するほかにない。

どこか混乱ぎみの
わたしのくちびるは
ちいさく震えながら

すっかり硬くなってしまったあなたの視線から
もう逃れられないことをさとった。

(しまった。)

しろく/
にごる/
フロントガラス
その向こう、よく知らない土地の
ガイドブック通りでないありさま。
冗談を抜かしあうには
つめたすぎる、熱すぎる、

「ねえ、」
瞳で合図して。もどかしいから。

あなたの太い腕がわたしに届こうとする
無骨なつくりの左手は
控えめに服をすべり、
取れかけのプラスチックのボタンに
そっと手をかける。

(爪、きれいに切りそろえられている)

もうすこしで日が落ちる

聞きなれた喧騒からは100キロも離れた地図上の★
新しくぜいたくな空気を
肺いっぱいに吸い込めるような木立の海

「もう、どこへもゆけない
こんなところまで来たのに」

小高いこの場所からは集落が点々とみえていて
あなたの緊張した睫毛をぼかしたり
迷いなく伝わる熱についての思惑を
ひっくりかえしたりする、


「あ」
「ねえ、」
「だめ」

だめ。


じっとしていると
時間が止まってしまいそう。
カーステレオからは誰かの声が能天気に響いている

(黄昏は逃避行)
2012.03.06
まぎれなく熱の質感だった
買ったばかりの皿にならべる
カンニングで手に入れた
記号のくさり
あなたに見せびらかしたくて
わざとこぼしてチラリと鳴らした

放課後はがら空きの通勤電車みたい
だれも見ていないから
気付いていないから

夜を待つのに飽きている
言葉もないうちに世界は改変され
わたしが手にしていた約束は
まるでごみくずのようにパチパチと
火花をあげて
そのうち弾けるだろう

うちならす鐘のもと
切り刻まれた時間のながれに
溺れられたのはむかしのこと
ゆるいねじ どこだかわかる?
わかんない
じゃあ帰れないよ

(雁字搦める)
2012.03.06
行き交うひとの多さと、
あまい匂い
金曜日が騒がしく幕を引こうとする
すこしの不安とだれかの思惑
サインカーブを追うふりをして
およぐ視線
まだ気付かない

時刻表通りに
ページはめくられていたんだ
冷えた頬も
あかい指先も
焦がした季節のぶんだけで
いっぱいなんだ

乗り慣れないホームドア
異世界へのトンネルをくぐるように
崇高な

いそぐ影と影のつなぎめ、解けていく
ふれたそばから忘れてしまう
あなたの温度がほしいな

ここはもう地上だろうか
真夜中の街の明かりが駅舎のすきまから零れて
坂の多いあなたの町がしずかに現れる

ただ耳を清ませた

この身体には乗せきれない
熱も氷も心臓をとかしてゆくばかりだ
よけいな音がすこしも聞こえない
あなたの、
あなたの夢をみていると
02系はあざとく
そっけなく終着する

(2号線)
2012.03.06
耳から脳までしみわたるような
あなたの声
ひどく甘い夢をみていた
いつかの少年は
みすぎた幾つかの事柄について
くわしい言葉を
ようやく知る

もうすこしだけ下に
目を閉じてわからないことを
わかって
詰め込んでいる箱
名前を書いて
しまっておいてね

昼は夕方になり
居心地のいい空間ができあがって
ゆく
楽しいことをしよう
死ぬほど憧れていた熱の交換を
しよう

窓も時計もない
さめかけの紅茶みたいな
一過性の毒と
いつまでものこる傷
あなたは私の手をとって
くちびる
を、
ふるわせる

(飽和する病)
2012.03.06
あなたの所有する皿に
わたしのちいさな両足をのせて
耳を清ませることで約束の代わりにする
そんな夢想

身体を押し潰して
視線を集めなおすと声まで遠くなって
あつすぎる暖房に
不信感を募らせていく

西へ向かうために
かきあつめた薬で熱をさげたら
とうの昔に飽きた歌でも
くちずさんで
ゆこう

記号が群れを成して
あたまの奥まではいりこむと
次に発さなきゃならない言葉は決まっている
合図を待って
今のうちに
ゆっくりと頷く覚悟を

あなたの影をおいてきた
むきだしの蛍光灯のもとで
よく知っている前提に似た他人の靴
ぬぎ捨てる前に
たしかめることで許されたい

西へ向かうために
あなたのみている物語の色を数えてあげた
その中で眩しくて傷だらけの宝石が
いとしくて
飲み込んでしまう

(食前の秘密)
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