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2015.07.12
いびつな夜が私を見ている
机も椅子もない真夏の地面
匂い立つ花はいつも
電柱の影にある
指切りのひとつやふたつ
なくしても構わないだろうか
いつか風を吸った
毛並みのわるい猫が鳴いている
あの坂の上

月は
嘘くさく煌びやかで
上等な布に空いた穴みたい
七月に
会いたかった人の声
目を瞑りたくなった
重たく濡れた足取りで
向かうまま 歩けるまま

(道のない夏)
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2015.07.12
夕闇が遠くなった
雨の音は
聞こえたふりをしたって
濡れない
しずかに積もる熱を
撫でてみて

おなかの奥に
なにも飼っていないよ
川沿いは祭りのあとで
なまぐさく煙っている

もてあますほどの宝は
いつか本の中に見た
乗れなかった船の先頭で
濁るばかりの海を照らすのは
だれ

(宵越しの身体)
2014.06.09
からだについた泥がじゃまで
目覚めることができなかった
冷たい空気から私を守る冷たい泥
皮膚は湿る

まもなく街は春になる
きみは途方にくれて
川辺を歩く私の小さな手のひらを忘れて
きっと計算をする
賢い子供のままの眉で

ああ
洗い立ての皿の色を
塗り替えたいな
なんなら空の色を借りて
燃えるような凍るような時間の切れ目を
私のこの眼に届けるように

(泳ぎ続ける魚)
2014.01.29
列車の窓辺は温かい
ガラス越しの日差しが
似たような背の人を
集めている
揺れている

言葉を
えらびたいな
底のない川のほとりで
じっと立っている
約束の時間
今度こそ

心地よい揺れが騙す
やぶれてしまった思い出を
大事に抱くのは
きみが弱いからだよ

あの顔を
期待してるんだ
しずかに曲がっている
この筆跡を
もう見慣れ切ったなんて
嘘でも
夢のようなのに

(カーブのきっかけ)
2014.01.29
手をだして
つめたい布が
肌を隠している
芯までとどく苦い味
吐きだして

はやく消してほしかった
電気の白は清潔で
この目を潰すには
十分すぎるよ

線路沿いの狭い道
坂道はゆるやか
どこかへ
導かれる用意なんてない
ただ歩いて
辿りつきたくて

その砂を
吐きだしていい

あなたは知っている
足を伸ばして
じっと待っている悔しさも

(日向の嘘)
2014.01.26
ひとつめの窓をひらく
星はつめたく光っている
家並みは息をひそめて
煙を吐いているみたいだ

ふたつめの窓をひらく
今日も夜だった

いつか絵本で知ったような
火のにおいは甘く
真っ白い雪を溶かして

あ 見えたよ
ぶあつい額縁を飾っている

(窓と夜)
2014.01.06
言葉が身体にとけていく
狭いボックスの中で
皮膚と皮膚が近づいて
どぎまぎする
平静を

まなざしが
浴びた日を返して
曇りのないコップの中へ
沈んでいく

音と音と音が
頭の中で絡み合うのに
言葉と言葉と言葉が聞きたい

ちくたく
時計は動かない
五時になったら目覚めよう
冷たい道路と
静かでうるさい街の声

言葉と言葉と言葉が聞きたい

星のない朝に
凍える胃は頼りなくて
ねえ
愛想を尽かしてしまったよ
手探りの闇を
はやく開け放して

(午前五時に開くドア)
2014.01.06
祈るように
両手をふさいだ
吊革が揺れる

悲しみには
かたちがないんだね
あなたの目は光る

あの日は世界が回転して
なにも見えなくなりそうだったよ
私の指がここにあること
はじめて知ったかのような
貪欲な手つき

触る
熱を込めて
ああ 朝はまだ若く
誰かは寝息を立てている
ひみつにしたいって思ったのが
私だけじゃないなら

これは悲しみだよ

(膨張する熱)
2014.01.03
みんなが
大きな声で騒いでいる
変だな
誰も痛がらないのに

世界は一時停止した
みたいなのに
ボトルの奥に溜まった夜が
しずかに
しずかに
頭の中に染み出してくる

どうして僕は眠りたいんだろう
こんなに耳がうるさくて
切りたいんだろう
台風はすぎさった
みたいなのに
一滴
二滴
滲んでくる

みんなが
大きな声でも小さな声でも
騒いでいる
どこかで聞いたような歌
懐かしい気分で
できれば口ずさみたいのに

みんなどうして
笑っているんだろう

平たい道路と
果てしなく連なる信号の束
知らない国の言葉が
さめきった肉体に呼びかけている
今にも剥がれ落ちそうなそれを
どうして抱けと言うのだろう

僕は苦しい
苦しくて
眠くて重くて
燃えてしまうのに

(鎧は僕を守らない)
2014.01.03
甘くて
舌がしびれてしまう
誰かにもらったクッキーは
チョコレートの味がした

見た夢を
もう一度見る
目も耳も身体も
どこかに埋めてしまいたくて
見た夢を
もう一度見る

明るく薄くなっていく
こじれた時間をとり戻すような
空の色
あなたはもう眠っているだろう
僕の身体を
旅してほしいのに

舐めたら甘いお菓子を
知っていて食べている
悲しいことも覚えている
好きになれない美しい人の声や
隣の国の首都の鉄道
本当はそんなんじゃない
全部きらいなんだ

見た夢を
もう一度だけ見たら
あなたのことを
あなたの指の長さのことを
考えてしまうだろう

時間が
明るく薄くなっていく
紡いだ気持ちを巻き戻すような
魔法の言葉
おしえて

(心が痺れる)
2014.01.03
苦い虫を噛み潰してから
何をするかを考えた
夜は短くて
訪れた光の朝が
僕の目を焼くのを恐れていた

目隠しを
解いてくれたの
あなたでしょう
名前も知らないくせに
触りたいとか思ってしまう
消えたいな

撮影は滞って
どこまでも浮かないシャドウ
一秒ずつ数えて
一秒ずつ沈めた
点けたくてしょうがない僕は
ふるえる指を隠すことだって
思いつかなくて
泣きたいな

はやく裏返して
光を吸い込んだの
眩しくてピンク色の光
もうすぐ
破けそうなんだよ

(暗室で迎える朝)
2013.12.22
埃まみれの
テレビの音が
うるさくてとても眩しい
窓の外ではきっと
いやになるほど散らかった昼の風が
私や
あなたの
身体を冷やす

つまらない日曜日だ
目を合わせたら手をとって
かわいたくちびるを押し付けて
なにかもっと甘いものの形を
見せてあげても
よかっただろうか

それはまるで
遠い国の
見知らぬ物語のようだ
懐かしく胸はえぐられて
泣きそうに震えて待っている
薄い紙を一枚破って
どぎまぎしながら床を見つめている
どうして
どうして
手に入れたことなどないように

(ガラスの部屋の中)
2013.12.02
 一人の旅人が、小さな舟で、川をくだり、終には海へとやってきた。

 舟の上には、本と、万年筆とノート、わずかな食糧、そして旅人に似つかわしくない、毛足の長いつやつやとした毛布がのっている。時計は持っていないが、日はゆっくりと傾き、じきに暗く、寒くなるだろうと思われた。旅人はある友人のことを考えた。友人のことを考えながら、ノートを一枚破り、彼に宛てて手紙を書きはじめた。かつての友人へ、あるいはかつての彼自身に向けた、いくつもの言葉が降りてくる。
 その間も、舟はしずかに進んでいく。もはやここは川ではないのだから、上から下へ行くでもない。只、波のゆれうごくその流れに、すべてはゆだねられていた。
 旅人が手紙を書き終えてしまうと、あたりはすっかり暗くなっていた。どこか温かい気分に満ちていた彼は、ふいに孤独を感じる。そうだ、ここは広い広い海の真上。友人の声は聞こえない。彼はそっと丁寧な手つきで、手紙を水面へと浮かべた。出来る限り優しく浮かべたはずなのに、手紙はすぐに沈んでいき、吸い込まれるように消えてしまった。あたりはどこまでもしーんとして、真っ暗だ。これではもう手紙を書くどころか、本だって読めやしない。旅人は疲れて、ゆっくりと瞬きをした。
 すると旅人の目の前に、一本の木が現れた。
若いのか古いのか、ぱっと見ただけでは判断がつかない。ふしぎに懐かしい感じのする木だ。深すぎない黄みがかったグリーンの葉は丸みを帯びていて、とても柔らかそうに見える。そしてなぜか、あたり一面真っ暗だと言うのに、この木だけは不自然にかがやいていた。よく見ると、ところどころについている赤い花が、光っているようだった。
 旅人はまたしても優しい気持ちになった。いつのまにか波はやんでいる。旅人はこの木のもとに留まれることを心の底から祝った。そして彼は毛布にくるまり、本を読みはじめた。必要なぶんだけの光を、木は照らしている。古びたページをめくりながら、ときどきチョコレートをかじり、ウィスキーを舐める。幸福な時間だった。時計は持っていないが、夜はこのままずっと続くのだろうと思われた。
 しかし旅人はあることに気がついた。時間が経つにつれて、花はひとつずつ落ちて、その光を失ってしまうのだった。この花がすべて落ちてしまえば、もう本を読み続けることはできない――。旅人の頭の片隅にちいさな悲しみと焦りが灯った。しかしそれでも旅人は本を読み続けたし、その時間は彼にとって十分に満たされたものだった。
それから永遠のような時間が流れた頃、このふしぎな木の花は、ついに残り一つとなっていた。旅人はそのことに気づきながら、まだ本を読んでいる。たくさん積んできたのだ。彼はたった今読み終えた本を閉じ、次の本を手にとり、開き、一行目を目で追いはじめようとしていた。
 そのとき、最後の赤い花が、ぽとりと海の水面に落ちた。とっさに旅人は目を瞑った。ああ、まだ始まってもいないのに――旅人は悔しいような淋しいような気持ちでいっぱいになった。また一人の真っ暗な孤独の中に投げ出されてしまう。そう思ったのだ。しかし、同時に、彼にとって孤独はもはや古い友人の一人であるかのようにも思えた。この夜じゅう読んできたたくさんの物語が彼の中で生きているのは、ほかでもない孤独のおかげかもしれない。
 旅人は、おだやかな気持ちで目を開けた。そこに暗やみはなかった。朝が来ていたのだ。旅人はおどろき、また、安堵した。なんだ。本などいくらでも読めるし、こんなに明るいのだったら、またどこへでも行けるだろう。ふしぎな木は、姿を消していた。太陽が眩しい。急に体が重くなったように感じ、彼はしずかに目を閉じた。波はゆったりと舟を揺らしている。

 旅人は、眠りについた。

(わだつみの木)
2013.09.09
ただ 風を切るように
走っていたいなんて
わがまま

だれの背丈も去年とおなじで
まきもどしのようなのに
言葉が厚くなる

迷いそうな地図を
よく読んだあの人
僕はすきだとおもってしまう

(栞の在りか)
2013.09.09
バスの窓に流れていく
まだ青い林檎の木々と
八月の暮れる空

愛想のわるい運転手には
似合わない丁寧なドライブ
ひとつ ふたつ
峠を越えて

ふしぎと眠くならなかった

窓枠に頬をはりつけて
なにを思ったんだったか
ただ少し拭きたいくらいに
ぼやけていたこと
覚えている

晴れ渡る予感が
みんなをつめたく つめたく
私をやさしく やさしくした
いつもと違う空気に
いつもと違う高揚が満ちて
おかしいくらいに笑っていた

郵便局や
ホームセンター
ここは国道だけがきれいで
あとはらくがきのようだ
どこもかしこも
ぐちゃぐちゃだ

つまらない友達の
話し声はすぐに消えて
ひとりでどこかへ帰って行ける

(往路より長く)
2013.09.09
雨に濡れた
軽い背骨も
黙って言うことは聞くだろう

こんな日も

歩みの速いひとびとは
信号が変わるのを
待ちくたびれて、目を閉じる

「薄やみの昼には
どうも頭痛がするね
神のことを、例えば思ってみよう」

風は遠く
白い砂地がめくれるなんて
有りえない気がする
つきさした旗を奪い合うような
賑やかな祭りなんて
ここには似合わない
気がする

(勲章)
2013.06.24
化粧水の華奢なボトルが
かすかな光に照らされていて
白い
借りっぱなしの本
積み上げて風を避けている

爪はすぐに伸びてしまう
煩わしい
洗っても洗っても汚れている
瞼もついには閉じそうだ

たまにはいつもと違う歌
選んでみて
階段を降りながら考えている
一瞬
一瞬の出来事

(瞑想の手段)
2013.06.24
そろえた靴は汚れている
雨にならなかった日の夜は
眩しい月も雲に埋もれて
ひとりきりのような身体に
空気がつめたく匂う

走って抜ける国道を越える
ここから先はずいぶん近くて
終わりになってたぶん眠くて
明日になれば泥も渇いて

なにも考えないで 電話をする
おもたい荷物は失敗だった 約束をする
静かな電車の音 思い出して
思い出している

濡れた花びらを指で押して
そっと振り返って 誰もいない道
駅は明るく賑わい
一歩ずつ離れていく僕は
きみに出会う

(雨にならなかった日)
2013.05.21
浅い眠りから覚めて
声を聞いた
ようやく橋を渡りきったんだ
そしてあなたが待っていた

片手には宝石を
もう片手には駐車券を
その瞳にはあふれんばかりの
頑なな愛をたずさえて

溶けはじめた氷が
山間をくだり ぬるくなるまでのあいだ
あどけない肩を
晴れた空の下にさらしていた


真下に
川は流れている
人々はランプを点けて
せわしなく 行き交っている

背は伸びずとも
もう三月だ

坂道も曲がり道も
いつまでも続くかのようで
饒舌すぎない上機嫌のあなたが
しずかに ハンドルを捌いていく

でもいつまでも続かない
賑やかな恋と旅

(二十歳)
2013.04.22
てのひらの傷 きっとすぐ治る
時計の針が交差する
すきだった歌の断片がきこえてくる
人々は言葉を捨てて
肩を揺らし 目をとじる

多すぎる足音の中で
立ち止まってみたら どうだっただろう
たくさんの自意識が
私を追い越していく

そんなに懐かしくおもえるなんて
そんなに新しい熱のありかを
そんなに

握りしめていたかったものも
いつの間にか忘れて
どこかで喋ったことのある人を
見落としながら低スピードで歩く

(日常の取捨)
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